第69回 2016年10月18日  三角縁神獣鏡に関する次の3件の話題

 

話題1 洛陽出土とされる三角縁神獣鏡…2015年11月の中国訪問実見報告…(鷲崎弘朋)

 中国河南省の古鏡研究家の王趁意氏が所有する洛陽発見とされる三角縁神獣鏡を、大阪府教育委員会の西川寿勝先生と河南省鄭州に赴き実見した。この鏡は中原特有の赤サビが多く、西川先生はこの「赤サビ」から日本から持ち込まれた鏡ではないとするが、この鏡の出土地点や出土状況が不明のため、科学的検証(鉛同位体比分析等)が今後必要であろうとのこと。

 

話題2 洛陽の三角縁神獣鏡…安本先生の見解…(末永時和)

 この鏡について、2016年1月の邪馬台国の会での西川先生と安本先生との討論で、安本先生はニセモノであるとした。今回の鏡の文様と銘文は北中国出土のものとは全く似ておらず、南中国のものとは少し似ていて、日本の三角縁神獣鏡によく似ている。最後に、このような議論は骨董市場からのものではなく確実な発掘出土品をもとにして行うべきであり、客観的な議論のためにもこの鏡の鉛同位体比を調査すべきであるとしている。

 

話題3 三角縁神獣鏡・橿考研レーザー調査からの考察(藤盛紀明)

 橿考研のレーザー調査から、三角縁神獣鏡は舶載とされるものも倣製とされるものも技術的には連続していることが判明した。その製造方法は同范技法と同型技法を併用で簡易挽型が利用された。中国でも倭でも鏡の複製は同型技法であるが、三角縁神獣鏡は同笵技法が主体であるとのこと。また、三角縁神獣鏡「私的」物語として「三角縁神獣鏡は初期ヤマト政権で流行した葬送儀礼」と考えた経緯について解説があった。